コロナ禍の老衰について考える
みなさんこんにちは!
健康を貯金するちょけん先生です。僕たちは自治体、地域包括支援センターと協力してシニア専門の出張体操の催しの開催や、福祉施設や有料老人ホームの体操教室を開催しております。
現在、コロナ禍で家から出ることが不安な方やこの2〜3年の間の運動不足が原因で筋力や柔軟性が著しく低下してしまったシニアの方のためにご自宅に伺う出張型のパーソナルトレーニングをおこなっております。今までジムに通っていたけどコロナ禍をきっかけに行かなくなった方や家から出ることが不安で運動不足になっていた方にご好評いただいております。
コロナが流行して4年目になり徐々にその猛威も緩やかになってきました。僕たちの体操教室も少しずつ再開されてきましたが、参加されていたシニアのお身体の衰えに個人差が大きく出ていました。その要因はこの4年間に運動習慣があったかなかったかです。
【コロナ禍の運動不足によるカラダの衰え】
・つまずきやすくなった
・転んでケガをした
・背中が丸くなった
・背中の骨がゆがんだ
・腰が痛くなった
・腕が挙がらなくなった
運動不足のこの4年間で衰えてしまった身体は、多少外出が増えたり活動量が増えた程度では身体は元の調子には戻りません。しかし、正しい運動習慣を身に着ければ少しずつではありますが生活に必要な筋肉は上がりますし柔軟性も上がります。
今回は先日発表された2021年度の死因の第3位となっている「老衰」をテーマに考えていきたいと思います。ここ数年死因の順位はずっと変わっておらず1.悪性新生物2.心疾患3.老衰となっております。今回「老衰」をテーマにした理由はコロナ禍になってからこの老衰が増加傾向にあるからです。悪性新生物と心疾患はほぼここ数年横ばいを推移していますが、「老衰」だけが毎年その割合が増えています。みなさまはシニアの方がお亡くなりになった際に耳にする「老衰」とはどういったものがご存じでしょうか?
老衰とは
「老衰で亡くなる、老衰死とは、加齢に伴うさまざまな身体機能の衰弱による死のことを指します。
年齢を重ねていくことで細胞は徐々に衰えていき、やがて分裂による再生がおこなわれなくなっていきます。それにより臓器や筋肉の働きにも不具合などの衰えが出てきます。
また、老化した細胞から分泌される特殊な免疫物質が周囲の細胞に働きかけることによって、周りの細胞の老化が促進され、全身の細胞や臓器が常に炎症を起こしている状態となるといわれております。
こうした要因により、日常生活の中で今まで当たり前にできていたことができなくなっできてしまいます。食事をしても臓器が栄養を吸収しにくくなることから、全身のあらゆる機能がさらに衰弱していきます。そして、次第に生命活動を維持することができなくなっていきます。
しかし、臓器と同時に感覚器官や脳の機能なども低下していくことで、老衰死に向かいつつある当人が大きな苦痛を感じることは少ないともいわれています。」だといわれております。
上記の内容であれば高齢者の理想の最後の迎えかたのように思えます。しかし気になるのはなぜコロナ禍に老衰が増えるのでしょうか?
ここからは僕の考察になるので一つの考え方としてお読みください。
老衰が増えた要因1:肺炎・誤嚥性肺炎の表記の変化
死亡診断書の死因病名が「肺炎」「誤嚥性肺炎」とされていた症例の多くは、実際には肺炎が直接の死因ではなく、加齢性変化による衰弱などによって死亡しているといわれているそうです。そして17年4月に発表された「成人肺炎診療ガイドライン2017」の発行を契機に、誤嚥性肺炎で死亡した場合にも、死亡診断書の死因病名に「肺炎」ではなく「老衰」と記載するケースが医師の中でも増えてきたといわれております。今までであれば肺炎や誤嚥性肺炎と診断されていたものが「老衰」と表記されるケースが増えたとするならばこれは決して理想の最後の迎えかたとはいえないのではないでしょうか。
廃用性症候群からの老衰
老衰は加齢による身体機能の低下、内臓機能の低下により静かに亡くなっていくことを指すのであれば廃用性症候群と老衰はとても似ています。
【廃用性症候群とは】
廃用症候群とは過度に安静にすることや、活動性が低下したことによる身体に生じた様々な状態をさします。
【廃用性症候群につながるコロナ禍の生活習慣化】
・1日中家から出ない
・運動不足になっている
・座って過ごすことが多い
ベッドで長期に安静にした場合には、疾患の経過の裏で生理的な変化として「廃用症候群の症状の種類」に示すような症状が起こり得ます。病気になれば、安静にして、寝ていることがごく自然な行動ですが、このことを長く続けると、廃用症候群を引き起こしてしまいます。
高齢者では、知らないうちに進行し、気がついた時には、「起きられない」「歩くことができない」などのケースは少なくありません。
たとえば絶対安静の状態で筋肉の伸び縮みが行われないと、1週間で10~15%の筋力低下が起こると言われています。高齢者では2週間の床上安静でさえ下肢の筋肉が2割も萎縮するともいわれています。
過度に安静にしたり、あまり身体を動かさなくなると、筋肉が衰え、関節の動きも悪くなります。そしてこのことが、さらに活動性を低下させてしまい悪循環でますます全身の身体機能にも影響をもたらします。最悪な状態では、寝たきりとなってしまうことです。一度廃用性症候群に陥ってしまうと完全な改善はほぼ期待できないといわれております。
コロナ禍で外出を控えたり運動不足でいた期間は限りなく絶対安静に近い状態になっています。そんな生活習慣が約4年間続けてきたシニアの方は確実にカラダは大幅に衰えてしまっております。
【廃用性症候群の主な症状】
・筋萎縮・・・筋肉がやせおとろえる
・関節拘縮・・・関節の動きが悪くなる
・骨萎縮・・・骨がもろくなる
・心機能低下・・・心拍出量が低下する
・起立性低血圧・・・急に立ち上がるとふらつく
・誤嚥性肺炎・・・唾液や食べ物が誤って肺に入り起きる肺炎
・血栓塞栓症・・・血管に血のかたまりがつまる
・うつ状態・・・精神的に落ち込む
・せん妄・・・軽度の意識混濁のうえに目には見えないものが見えたり、混乱した言葉づかいや行動を行う
・見当識障害・・・今はいつなのか、場所がどこなのかわからない
・圧迫性末梢神経障害・・・寝ていることにより神経が圧迫され、麻痺がおきる
・逆流性食道炎・・・胃から内容物が食道に逆流し、炎症がおきる
・尿路結石・尿路感染症・・・腎臓、尿管、膀胱に石ができる、細菌による感染がおきる
・褥瘡(じょくそう)・・・床ずれといわれる皮膚のきず
廃用性症候群からの寝たきりでお亡くなりになった場合診断は「老衰」となります。
老人性うつから廃用性症候群へ
注意力が散漫になって、抑うつ感が強く、「死にたい」と思うなど、悲観的になります。食欲減退や不眠に悩まされるといわれております。
うつ病を発症すると、気分が落ち込む、注意力が散漫になったり、物事への興味や幸福を感じない、やるきが出ない、食欲が落ちる、眠れないなどの症状が出てきます。
記憶力の低下や、判断能力がなくなったりなどの症状も出るために、認知症ととても似ているともいわれております。
高齢者のうつ病は認知症と間違われることが多く、家族や介護している方が気づきにくく、時間が経つうちに、状態が徐々に悪化してしまうといったケースに繋がります。そしてうつ状態から無気力状態になり運動不足や寝たきりになることで廃用性症候群に繋がってしまいます。
老人性うつの主な原因
老人性うつは、引っ越しなどの住環境の変化、仕事を退職した、家族と別居となった、などの「環境的要因」と、病気の悪化や不安、配偶者との死別、老化に伴う体力や身体の衰え、などの「心理的要因」の2つが主な原因となり発症することが多いと言われます。今シニアは新型コロナによって今まで出来ていたことができなくなってしまい「やりたいことができない」「旅行や孫に会えない」「友人と出かけられない」などの環境的要因と「コロナに感染しないか不安」「いつまで続くんだろう」などの心理的要因の両方が一気にシニアに降りかかってきている状況になってしまっています。実際にコロナ禍で老人性うつはコロナ前と比べ増加しているというデータも出ております。
【老人性のうつの特徴】
・頭痛や立ちくらみ
・めまい
・食欲低下
・疲れやすい
・死にたいという悲観的な考え
・肩こり
・気持ち悪い
・しびれ
・耳鳴りなど
フレイルによる筋力の低下
新型コロナウィルス感染症は、高齢者においては感染の危険性だけではなく、家に閉じこもることによる健康へも影響します。
なかでも、動かないことで、フレイル(虚弱)が進みます。 たとえば、高齢者が2週間の寝たきりになると、失う筋肉量は、加齢による7年間で失う量に匹敵するといわれています。コロナ禍で外出を控えることは、歩行機会が失われ、筋肉の量や質の低下を招く大きな原因となります。
ケガの後寝たきりになり亡くなっても診断は老衰
廃用性症候群、老人性うつ、フレイルこれらはすべて筋力の低下の引き金になります。特に下肢の筋力が低下してしまうと転倒のリスクが上がってしまいます。転倒の怪我が原因で寝たきりになってしまうと筋力だけでなく循環器系の機能も低下してしまいます。そういったことが原因で死亡してしまうと「老衰」という診断になってしまいます。
新型コロナの感染が落ち着いてきたからこそ次は寝たきりにならないを目標に
廃用性症候群、老人性うつ、フレイルの全てにおいて共通していることはこれらは寝たきりにつながる要因になってしまうことです。そして寝たきりでカラダが衰えてお亡くなりになることで「老衰」という診断になってしまいます。「老衰」はコロナ禍に於いては決して理想的な最後の迎えかたとは言えないのではないかと僕は思います。あくまで僕の考察にはなりますがこの3年間で老衰が増えたということは、筋力低下による転倒が増えたことと、寝たきりになった方が増えたのではないかと考えています。コロナ禍がこれからも続く中でよい習慣を身につけ転倒リスクや寝たきりを高めないような過ごし方を心がけることが重要なポイントになると改めて思いました。
今が分岐点!運動習慣がカギ
上記でご紹介したすべてが解決できるわけではありませんがより健康的に長生きする方法の一つとして正しい運動習慣をみにつけるということがあります。
筋力・柔軟性の低下やバランス機能の低下は転倒の原因になり、転倒してしまうと寝たきりになるリスクが高くなってしまいます。
筋力・柔軟性の低下予防
僕の体操教室や個人レッスンのご参加者にも70〜80歳代の方は多くいらっしゃいますが、その方たちと体操をしている中で実感されられることが「筋肉の変化(良い方向)に年齢は関係ない」ということです。初回いらした時には杖をついて手すりを掴んで階段を登り切るのに数分かかってしまうようなおばあちゃんがいました。現在90歳代、今は姿勢が以前と比べ物にならないほどきれいになり日にはよりますが調子のいい日は杖を使わずに歩きますし、階段を登り降りも以前よりスムーズになりました。もともと膝や腰に不具合があってご参加されたお客様も大勢いますが、体操に参加するようになって痛みの頻度が大きく下がったおっしゃる方もいらっしゃいます。
バランスの向上
個人レッスンではバランス機能の向上を目的とした体操をおこないます。バランス機能は筋肉の量ではなく、柔軟性と全身の筋肉の連動と使い方によって決まりますが、シニアの多くの方があまりうまくバランスを取ることができません。しかし、緩やかではありますがバランスの体操を継続することでカラダが筋肉の使い方を覚えるようになり、バランスが取れるようになり徐々に機能はあがります。バランス機能が整うことで「歩行の姿勢」「転倒予防の機能」が向上します。転倒が原因で寝たきりにならないためには、カラダがしっかり動くうちに運動習慣を持つことがとても大切です。
うつの予防にも運動習慣!?
近年では、うつ症状の予防や改善に適度な運動習慣が効果的だというレポートが多数出ています。アメリカの大学では10000人を対象にした調査をしているものもありその効果のエビデンスが出ております。適度な運動をすることで成長ホルモンが分泌され、成長ホルモンがストレスホルモンの抑制にはたらいているといわれております。
新型コロナの流行も4年目になり大なり小なり運動不足の影響がカラダに顕著にみられるようになってきました。動かない生活をこれからも続けていくと寝たきりに繋がります。自然な衰えで最後を迎える老衰は理想的な最後の迎えかただと僕も思っています。しかしさまざまなレポートや発信をみると、コロナ禍で増える老衰は自然な衰えとはすこし違った衰えになっているようです。このブログがきっかけでシニアの方々が、自身の運動不足に危機感を感じることで運動習慣を身につける行動変容のきっかけになれば幸いです。運動に年齢は関係ありません。運動をしなきゃと思ったその時が運動をはじめるベストなタイミングです。僕もこれからもシニアの方々が元気で過ごせる情報や動画を発信していきます。一緒に頑張っていきましょう。
免疫力と転倒予防のための自宅体操DVD
明日の免疫力をアップさせるちょけんセラバンド体操
筋力をしっかりつけたいというシニアの方にオススメのDVDです。セラバンドというリハビリ施設でも活用されているゴム製のバンドを使ったプログラムになります。
◆DVDメニュー内容
1.姿勢改善に効果的な体操
2.胸の外側を刺激する体操
3.姿勢を整えるお腹の体操
4.転倒防止のための太ももの体操
5.すり足転倒予防の足の体操